2023年売上収益1兆1,000億円へ
汎用事業を中核にグローバル推進

日本ペイントホールディングスは2021~2023年度の新中期経営計画を発表した。その中で2023年の売上収益1兆1,000億円、営業利益1,400億円、EPS(一株当たり利益)225円を目指す方針を明らかにし、グローバルトップに向けた展開を加速させる。中国を含むアジア及びトルコを高成長市場と位置付け、汎用事業で一層の売上拡大を目指す一方、3年間のグローバル投資額は1,250億円を計画しており、国内生産拠点の変革にも着手する。


取締役会長代表執行役社長兼CEOの田中正明氏は近年の経営環境に対して、「デジタル革命や環境問題対応など現在のような変化の激しい経営環境においては常に5年から10年を見据えてその変化に果敢に対応していく姿勢が望まれる」との見方を示し、中計は「そうした経営のアプローチを前提とした3年後のマイルストーン(中間目標)」として位置付ける。

売上収益成長は2020年7,811億円から2021年に8,900億円、2023年には1兆1,000億円を目指す。

既存事業は中国・アジアを中心に順調な成長を進めてCAGR(年平均成長率)10%を達成することを見込む。2021年からは買収したインドネシア事業とインド事業が新規連結となり売上収益増に寄与し、既存事業に新規連結を合わせて2023年には1兆1,000億円とCAGR10%を超える売上成長を実現できるとの考え。

一方、利益について2021年はサプライチェーン改革やDX導入、基盤システム整備にかかる経費増加(約95億円)を見込むものの、一過性のものであり2023年に向けて漸減。2023年には効率化の推進とともに2020年並みの固定費になると想定する。

中国汎用、ディベロッパー連携強化

2020年で売上の56%を占める中核の汎用塗料は中計期間中にCAGRで10~15%伸ばす計画。

汎用市場の観点で中国は最大かつ高成長の市場で、中古住宅の改装需要の急激な拡大に伴い、DIY(建築汎用塗料)市場は今後も安定成長するとの見方。それに対し「立邦」ブランド力とNIPSEAグループの強みを生かして展開する。調色機の増加などによる地方都市でのシェア拡大、オンラインやソーシャルメディアの活用、事業のデジタル化を強化する戦略。

更に「飛躍的に大規模市場へと変貌してきており、DIYよりも伸び率は高い」(田中社長)と見るのがProject市場と称する分野。このセグメントでは強い資本力を背景に顧客との提携や製品ラインアップ拡充などの総合力を発揮し成長を目指す。不動産市場で存在感を増すトップ100のディベロッパーとの関係を更に強化、同時にトップ50のリノベーション会社とも同様の関係を構築していく。

一方、日本の汎用市場に関しては、「新たな市場の創出とデジタルの活用を通じてシェア向上を目指す」戦略。

環境意識の高まりを背景とした水性塗料の販売機会が増加している他、抗ウイルス塗料などの新規需要が拡大しており、2023年に向けて抗ウイルス製品の拡充と営業・プロモーション強化を進める。更にDXを活用した生産自動化の推進による顧客サービスの向上や、デジタル拡充とインフラ整備による販売店・施工店へのサービス向上にも取り組んで日本市場全体のマージン改善へ貢献していく。

自動車用事業、中国シェア拡大へ

グローバル一体化が不可欠な自動車用事業は今年1月1日にNPAC(日本ペイント・オートモーティブコーティングス)を発足させグローバル体制を本格的にスタートした。Global Key Account Manager(GKAM)やLocal Key Account Manager制度を導入して顧客への迅速な情報サービス提供をワンストップで実現していく。R&D機能もグローバル体制を整えてGKAMと連携しながら顧客ニーズに合った研究・商品開発を進めるとともに品質保証体制の強化につなげる。

NPACのグローバル体制によってNIPSEAの営業力と日本の技術開発力を活用して中国で大きくシェアを拡大するとともに、アジアのみならず欧米でも着実に優位性を確保していく。

3年間で1,250億円の設備投資
岡山新工場2022年に竣工

設備投資の基本方針は、新中計期間を持続的成長の土台を構築する期間と位置付け、世界各地の成長を取り込む「攻め」とリスク耐性を強化する「守り」の投資を実行する。

3年間のグローバル投資額は1,250億円を計画。内訳は拠点新設・生産能力増強・流通網整備などの新規設備投資に650億円、設備維持更新・老朽化対策・安全強化などを目的とする既存設備の更新投資として400億円、DXを活用した合理化・情報化に100億円、研究開発・環境保護などに100億円。

主な案件では、まず米国のテネシー州チャタヌーガの新樹脂工場。今後の北米自動車塗料生産の戦略拠点となる。続いてベトナムのハノイに新樹脂工場。アジアの中でも特に成長率が高い国のため、塗料原料である樹脂工場を建設する。塗料工場は既に数年前に新工場が稼働しており、これによりアジア全体のサプライチェーンを強固にする。中国(天津濱海)でも同様に樹脂工場を新設する。

日本でも各生産拠点の整備やサプライチェーンの再編に取り組んでおり、岡山の塗料工場、神奈川の汎用塗料向けの調色工場が立ち上がる。海外新工場を含めこれらすべての工場は自動化が進んだ工場となり、高度なサプライチェーンを実現するためのスマートファクトリーと位置付ける。

日本国内ではこれまで長期間にわたり設備投資を抑制してきた結果、工場の老朽化が進んだ。また、「現在の工場ではSDGs・ESG対応が難しく、CO2排出ネットゼロに向けた対策を実施するためにも国内投資が必要」との考え。

国内投資に関しては、2040年までの20年にわたるマスタープランを作成し、それを前提にまずは足元の3年間、この財務規律の中で推進していくアプローチとしている。



主な投資プロジェクト
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HOMENew Trend2023年売上収益1兆1,000億円へ

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