色見本帳やノベルティグッズの企画制作を手がけるエーエムエンジニアリング（本社・大阪市、社長・雨皿實氏）は、中国進出に関心を持つ企業に対して、現地事務所と人材を提供する海外出店アシストサービス事業を開始する。利用する企業は、現地ビジネスを軌道に乗せる前の初期コストを抑えられるメリットがある。中国以外の国にもアシストサービスを広げていく考えだ。
エーエムエンジニアリングは、塗料業界向けを中心に受託事業や資材販売を行う製造輸入会社。日本総輸入元として米・レッドデビル社の内装用パテなどを販売する他、塗料色見本帳、カタログ、色見本板の受託製作、プラスチック計量カップ、LED付きキャップの販売、企業販促物の製作など業容は多種多様に展開。
2019年に他界した創業者の雨皿裕史氏が建築用塗料メーカーの技術者出身だったこともあり、手がける商材の多くは主要取引先とする塗料メーカーのニーズによって広げてきたもの。同氏が塗料メーカー退職後は、シンガポール資本の塗料メーカーから中国での法人設立を任されるなど中国との関わりが深く、起業後は中国でプラスチック製品や色見本帳制作のための工場を合弁、独資で設立。国内企業が求める商材に対し、現地拠点を活用して供給するスタイルが同社のビジネスモデルとなっている。
現在会社は、雨皿裕史氏が逝去するまで現地工場のマネジメントを担当した息子の雨皿貫氏（35）が跡を継ぎ、2019年11月に社長に就任した。
今回スタートする海外出店アシストサービスも同社が中国で培ったハード、ソフト両方のノウハウを顧客に提供することを目的としている。雨皿實氏自身も拠点を構える大連の日本商工会で代表幹事を3年間務めた経験もあり、「これまでお世話になった塗料業界や建築業界の皆様に自分の経験や人脈をシェアしたいと考えた」と同事業の構想に至った経緯を話す。
サービスの概要は、中国ビジネスに関心を持ち、現地に拠点を持たない国内企業に対し、同社のオフィスと人材を活用できるようにするもの。オフィスを自社の出張所として活用できる他、日本語のできるスタッフが在籍し、事前に定められた時間内であれば自由に仕事を依頼できる。
基本メニューは、現地スタッフを活用できる時間に応じて、①10時間・3万5,000円②30時間・10万円③50時間・15万円④100時間・25万円⑤フリー・応相談の5プランを揃える（すべて月額）。仕事内容は、市場調査、与信調査、アポイント調整、輸出入手続き、PC入力作業、営業活動など。必要に応じてCADやプログラミングなど専門スキルを有した人材の採用も可能だという。「日本ブランドを訴求する上でSNSの活用も有効手段となっているが、中国で登録された携帯電話でないと使えないアプリもある。当社のサービスであれば現地スタッフが画像撮影から投稿まで行える」と情報配信の依頼にも対応する。
在籍するスタッフは日本に8年以上の留学、もしくは日本企業への勤務経験がある人材で日本語検定1級以上の理解力を有する他、基本PCスキルや輸出入貿易の実務経験も備える。一方、オフィス環境は、地下鉄やバスなどのアクセスに優れ、駅や百貨店にも直結する市内中心地に立地し、Wi-Fi（無料）も完備する。出張時にはオフィスを拠点として業務や訪問客の受け入れができる傍ら、日本滞在時も現地スタッフを社員として活用できる、いわば"リモート海外進出"を可能にした形だ。
これにより、中国進出を目指す企業にとっては、一大消費国としての成長性を期待する一方、懸念だった家賃や人件費など初期コストの軽減が可能になる。
同社の試算によると、法人登記なしで出張所を構える場合、オフィス賃料（50㎡）5,000元／月と人件費（日本語検定1級）1万元／人・月で年間18万元（約315万円）が必要。また法人登記ありで事務所を設立する際は、税務申告のための会計事務所顧問料や資本金が必要となり、初年度に1,500万円程度のコストがかかる計算だ。
事業を軌道に乗せる前のコストのため、時間単位で現地スタッフを活用できる同サービスは、投資コストを抑えながら、現地事業をスタートできるところにメリットがある。
更に同社は要望に応じて、営業所開設や法人登記などの事務手続きや輸出入貿易サポートに対応する他、輸送コスト低減のために同社が定期利用するコンテナへの混載も受け入れる考え。また同社が加盟する商工会の優遇措置として短期商用ビザの発行を可能にするなど、同社のネットワークを提供していく考えだ。
雨皿氏は「撤退リスクを含めた海外進出の負担を軽減できるサービスとして多くの企業にご利用頂きたい」とコメント。今後は同様のサービスをFCを通じて同社が関係を持つ北米、南米、韓国にも展開を広げる意向だ。
人気の高い離型剤フリーの軽量カップ。
塗料以外の採用も増えているという
