三洋化成工業は、ポリオレフィン樹脂に練りこむだけで、樹脂表面を親水化し、持続的に塗装性、接着性を付与する樹脂改質剤「メルアクア350L」(特許申請中)を開発した。

ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレンに代表される汎用樹脂で、加工性、耐水性の高さから自動車バンパー、自動車内装材、建材シートなど多種多様の分野に広く使われている。しかしながら、塗装や接着を用いた加飾に関しては、疎水性表面を形成するため直接付着しないなどの課題がある。

そのため一般的に塗装・接着する際は、樹脂表面の親水性を高めるため、プラズマ処理やフレーム処理、またはコロナ処理といった表面処理を行い、その後塗装・接着の前工程としてプライマー塗装を行う必要がある。また処理を施したとしても数時間程度で改質効果が劣ることから同一工場内に処理工程を設けるか、外注にしても輸送時間に制約を強いられるなどの課題があり、設備導入や安全対策などの観点から生産性向上のボトルネックになっているとの見方もある。

その中で今回同社が開発した「メルアクア350L」は、オレフィン樹脂そのものを改質し、塗料、接着剤の付着を可能にした点が最大のポイント。ポリオレフィン樹脂と親和性の高い疎水性セグメントと親水性の高いセグメントの両方を有するポリマーの開発に成功した。

開発のポイントとなったのは、疎水性と親水性を組み合わせるポリマー設計技術。技術担当者は「表面に親水性を持たせるように設計した」とポリオレフィンの特徴でもある疎水性との両立に苦心しつつも「ポリマー構造のため、物理的接触や経時変化で劣化することがない」と付加価値性を確保した。

同社ではポリオレフィンに親水性を持たせる研究については20年前から着手しているという。開発成功の背景には、樹脂改質剤として先行開発する永久帯電防止剤「ペレスタット」「ペレクロン」やポリオレフィン樹脂用の分散剤・相溶化剤である「ユーメックス」などで積み重ねた技術知見が支えたと強調する。

今後は、ボリュームゾーンである自動車向けを中心に提案活動を図っていく意向で、採用が実現すれば、処理工程を一気に不要にする可能性があるだけにインパクトは絶大。

既に海外からも問い合わせが相次いでおり、国内外での成長を見据えている。