東証二部上場、次なるステージへ飛躍

オーウエル(本社・大阪市、代表取締役社長・飛戸克治氏)は昨年12月13日に東京証券取引所市場第二部に上場した。塗料商社としては初。上場の目的について飛戸社長は「ビジネスチャンスや経営資源との出会いの質と量を高めるため」と説明。調達した資金は塗膜形成の管理システム開発や海外拠点の資本増強などに使用する意向を示す。強みの塗膜形成力を更に高度化させるとともにグローバル展開を強化して成長を目指す。


オーウエルは工業用塗料販売を主体とする塗料商社。2018年3月期の売上高は637億円(連結)で、塗料販売業としては国内トップクラスの規模を誇る。塗料関連事業は塗料や表面処理剤、化成品、塗装機器・設備などの販売の他、塗装ライン工事や内外装リフォーム工事も手がけている。

もう1つの事業である電気・電子部品事業では自動車向けのホールIC(磁気センサ)や工場構内などで使用されるLED照明製品を製造・販売している。

同社の強みは塗膜形成に関する課題解決力だ。塗料や薬剤の物流や在庫管理はもちろんのこと、顧客の工業用塗装ラインの現場において、塗膜形成に関わる前処理工程、塗装工程、乾燥工程を技術的にサポートして日々発生するさまざまな課題の解決に寄与している。

中でもメイン業種である自動車産業では要求水準が厳しく、そこで培った技術を他業種でも展開することで事業拡大を図っている。

IoT管理システム開発へ

今般の上場には連携ビジネスの可能性と塗膜形成力の高度化という2つの狙いがうかがえる。

連携ビジネスについて現段階では「M&Aなどの具体的な案件があるわけではない」(飛戸社長)としながらも、グローバル化を推進する同社では「経済環境の大きな変革の中、ビジネスチャンスの出会いの質と量を高めていきたい」と異業種、同業種に隔たりなく連携する可能性を示唆。

上場によって市場から調達する資金の使途については、大きく2つの戦略を掲げる。塗膜形成力の高度化と海外拠点の充実だ。

「塗装ラインの自動化が進んでも、塗膜形成過程を管理するのは人であり、当社の社員がラインに張り付いて仕事をしている。それらの高度化・省人化のシステム開発に資金を投入する」とコメント。

自動車関連を始め工業塗装の現場では、前処理→塗装→乾燥→成膜に至る工程の中で塗膜形成に影響する要因が安定しないケースは多い。結果的に不具合が生じると、トラブルシューティングに人が奔走することになる。

このため塗膜形成過程における従来の属人的な管理の機械化を進めていきたい考え。装置や設備機器の稼働状況のデータ化や分析がシステム化できれば、異常や不具合の予測にもつながることから、IoTによる塗装の高度化や検査工程も含めた省人化など管理システムの開発を強化していく方針だ。

グローバル市場で役割増す

海外拠点の充実については、「国内のビジネスを国内だけで完結させるのは、お客様に対する提供価値を考えるとかなり限定的になってしまう。お客様がグローバル展開を推進する中で、多面的に支えられる体制が必要」として強化に取り組む。

近年ではアジアを中心に塗装の品質向上に加えて効率化や環境問題に対する意識が高まっており、日本と同じ基準や品質が求められてきている。同社の「塗膜形成に関する課題解決力」の需要増が期待できるため、市場調査を進めながら、海外拠点の資本増強などを検討する。

現在同社の売上高全体に占める海外売上高比率は約13%。国内の塗料市場は大きな伸びが期待できないため、国内売上高は維持しつつ海外売上を伸ばすことを目指す。

また、中期計画のビジョンとして「意匠や機能で、人々の未来を豊かにする」を掲げている。これは、同社が今後伸長していく事業領域を表しており、塗料・塗装だけでなく、フィルムなどのドライ工法も拡充していく意向。「意匠性や機能性を付与することは製品やサービスが変化してもどこかで必要なもの。形が変わったとしても我々の存在意味はある。縁の下で製品やサービスを支える存在でありたい」と方針を語る。

上場した思いについて飛戸社長は「当社のお客様は上場企業が多く、グローバルに展開されているお客様も非常に多い。仕入先も上場企業が多いですし、それぞれが経済環境の大きな変化の中で生き残るために必死で経営に努力されている。その取引の間にいる当社が、今のままでいいのかという思いがあった。環境の変化に我々も対応して自分達も変わっていかなければならない時期に来ている。より厳しい環境に身を置くことで我々自身を鍛えることができるのではないか」との認識を示し、次のステージへの飛躍を目指す。



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