キチンナノファイバーが毛髪強度を向上
100%生分解性、用途展開を積極化

大村塗料(本社・鳥取市、社長・大村善彦氏)は、キチンナノファイバーを配合した洗髪剤が毛髪のハリ、コシを強化したとの検証結果を発表した。先行して開発に着手しているシャープ化学との構造用接着剤の共同開発でも接着強度が向上したとの知見を得ており、生分解性、人体に害を及ぼさないバイオマス機能性添加剤として用途展開に弾みをつけている。


キチンナノファイバーは、エビやカニの殻から抽出される天然高分子であるキチンをナノファイバー化したもの。海洋資源の有効活用策として化粧品や養毛剤、人工皮膚、創傷治癒材、健康食品など多種多様な製品に応用展開が期待されており、同社でもキチンナノファイバー含有抗菌・抗ウイルス内装用塗料「キトサンエイト」を開発し、市場展開を行っている。

2017年には、パイロットプラントでの製造特許を取得。マイクロバブルを活用した解繊処理を加えた独自製法を活用することで供給の課題となっていた製造コストの低減に成功。並行して産学連携による研究開発を進めるなど用途展開を積極化している。

今回実施したのは、毛髪の引張強度試験。10人の日本人女性(10代)の毛髪(5cm)に対し、部分加水分解したキチンナノファイバー5%を塗布後、自然乾燥を実施。前処理として約80%RH条件下で24時間以上調湿した。

その結果、弾性率は3,000N/mm2と未処理と比べて約36%上昇。最大応力は約34%増、破断ひずみも約1%増と良好な結果が得られた。これらの試験項目は、髪の毛の張りやコシに関するもので大村氏は「リンス効果により毛髪の強度が向上したことを示している」と説明。なぜ強度が上がるのかのメカニズム自体は不明ながら、「電子顕微鏡でもキチンナノファイバーが毛髪面に広く配向し、強度向上に寄与していることが分かる」と話す。

先行して実施しているシャープ化学との共同開発においても酢ビ系接着剤に濃度1%の分散液を1%添加し、20%の強度向上が得られたとの検証を得ており、液体製品の物性向上に寄与する新規材料として訴求していきたい考えだ。

普及拡大を目指す上で、最大の特長となるのがバイオマス性能。廃棄されるカニやエビの殻を再利用する天然由来の機能性材料であることや100%生分解性を有し、「例えば肺に取り込んだとしても容易に酵素分解される」など人工臓器への採用も可能にする人体への安全性が魅力となっている。

カーボンナノチューブやセルロースナノファイバーなどの繊維系材料が新規材料分野や製品開発で関心を集める中、同社はキチンナノファイバーで用途提案を積極化していく方針。

大村氏は「現在、サンプル提供として、8,000円/kg(1%分散液)で提供しているが、量産拡大により更にコストは抑えられると考えている」と話す。



検証の結果
検証の結果

HOMENew Trendキチンナノファイバーが毛髪強度を向上

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