直取引の塗装店、全国2,000社店到達

建築用塗料メーカーのアステックペイント(本社・福岡市、社長・菅原徹氏)が躍進している。2021年は前年比150%増の売上高を記録、コロナ禍の市況停滞を尻目に業績を大きく伸ばした。新興勢力ながら、2021年12月期の売上高は約50億円と、建築用塗料メーカーとして販売金額で2番手グループに食い込み、市場での存在感が高まっている。昨年は顧客の塗装店(加盟・登録店)の数を、それまでの1,500から一挙に2,000社店に拡大、母数を増やしたことが売上拡大に貢献した。顧客数のボリュームを強みに更なる事業拡大を目指す。


同社は、オーストラリアの塗料メーカー・アステックペイントの国内総代理店として2000年に事業をスタート。その後、塗料の自社開発、自社製造に乗り出し、2014年には日本塗料工業会に入会、建築用塗料メーカーとしての地歩を固めた。

設立当初から、塗料の流通を介さず、加盟店契約などによって個別の塗装店と直接取引する形態で事業を推進。製販装の枠組みを超えた新興勢力として市場に乗り込んだ。時流的には、住宅の塗り替え市場で自社元請化を目指す塗装店が増え始めた頃合いで、それらの塗装店とつながることで飛躍のきっかけをつかんだ。

営業を不得手とする塗装店が多い中、受注力を高める販促ツールやサービス、他社との差別化を明示できる商品(塗料)の提供、施主に響くプロモーションなど塗装店のB to Cビジネスを支援。塗装店との直接取引だからこそ得られるニーズや要望を製品開発やサービスに反映させるマーケットイン戦略を徹底し、顧客の成長と顧客数の増大に伴う成長カーブを描いてきた。その上昇カーブの角度がコロナ禍の中で一気に上向いている。

フッ素塗料、2万円切るインパクト

急上昇の理由は、顧客数の増大とそれに伴う業績の拡大だ。同社が直接取引する塗装事業者(加盟店・登録店)の数は、2021年末時点で全国に約2,000社店。1年前に比べ一気に500社店が増えた。それに伴い、2021年の売上高も前年対比で150%を記録、近年にない伸びを見せた。

同社が昨年、顧客数の増大を仕掛けたのには、したたかな戦略がある。低価格帯の需要層、つまり市場のボリュームゾーンの取り込みだ。「それまで、元請型塗装店様の中でも営業力があり、高価格帯の塗料でも仕事を取れるお客様がメインだったのですが、市場にはやはり価格を優先する需要層が多くあり、そこにマッチする塗料の供給を始めたことで加盟・登録されるお客様が一気に増えました」(担当者)と説明。市場のボリュームゾーンに向けた塗料の発売で顧客数を増大させた。

具体的には、外壁用のフッ素系上塗り塗料で2万円/缶を切る価格帯で市場投入した「フッ素REVO1000」がそれだ。1液水性の外壁用(遮熱)塗料で、フッ素系塗料としては業界でも破格の価格帯を打ち出した。「それまでもリーズナブルな需要層に向け、シリコン系の壁用遮熱塗料(シリコンREVO1000)を1万円強で提供していましたが、そこにフッ素グレードが加わったことで塗装営業での提案プランに厚みができ、成約率アップへの期待から加盟・登録店様が急増しました」と製品戦略が当たった。

一方、同社には2015年に発売した「超低汚染リファインシリーズ」という住宅塗装市場向けの主力製品がある。「美壁」と「遮熱」を両立させた製品コンセプトが市場に受けた塗料で、『汎用シリコン塗料の価格競争から脱し、高額受注が狙える』と営業力のある加盟塗装店が支持、同社の近年の成長を支えるヒット商品となった。

この高付加価値路線の「超低汚染リファインシリーズ」に加え、前述の低価格帯の「REVOシリーズ」をラインアップしたことで、住宅塗装市場の幅広い需要層をキャッチ、『塗装営業で強く戦えるようになった』(塗装店)とユーザーの急増につながった。

塗装店インフラ強みに事業加速

同社は次なる成長戦略として「市場の拡大」を掲げる。その1つめのターゲットが住宅塗装分野における「下請け市場」だ。「例えば地場の工務店やガス販売店など地域に多くの顧客を抱えている企業に対して、そのOB客や顧客の住宅塗り替えサービスの事業化を提案し、支援していく取り組み」と説明。全国2,000社に及ぶ同社の加盟・登録店に、それら地域企業の下請け(協力業者)として活動できる社店を募りマッチング、地域のさまざまな企業に対して住宅塗り替えサービスの事業化を働きかけていく取り組みだ。

「住宅塗装における施主様への営業ノウハウ、現場管理のITシステム、そして施工を担う協力業者様をワンストップで提供できるなど、当社が積み上げてきたさまざまな仕組みを活用。住宅塗装サービスを新たに始められる企業様に対して早期の事業化を支援するとともに、当社の加盟・登録店様にとっても仕事量の増加という明確なメリットを提供できる」と事業性を確信。「SC住宅塗装事業」という新たなチャネルを社内に設け、活動を始めた。

「成長志向の強い各種の企業様の賛同を得て、想定以上に立ち上がりが早い」と手応え十分な様子。2,000社店の加盟・登録店を擁し、全国各地で有力な塗装店をマッチングできるのが同社の強みで、「協力業者体制を拡充してより幅広い需要を取り込むとともに、加盟・登録店様のボリュームを強みに、住宅以外の塗装分野にも積極的に進出したい」と構想を広げる。



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