顧客拡大へIT・デジタル戦略加速

塗料メーカーのIT・デジタル戦略が加速している。建築用塗料メーカーのアステックペイント(本社・福岡市、社長・菅原徹氏)は塗装工事店向けの現場管理アプリを塗料メーカーで初めて開発、今年2月に「現場ポケット」の名称で正式リリースした。塗装店の業務の効率化に役立つアプリを月額8,800円の最安値で提供する。続いて4月にはやはり塗装会社向けに特化したオウンドメディア「AP ONLINE」を公開、塗装業界の成功企業の経営ノウハウなど希少性の高い情報をオープンに提供する。いずれも新たな顧客の開拓に向けた施策で、IT・デジタル戦略の巧拙がメーカー間の競争にも影響してきそうだ。


同社は、オーストラリアの塗料メーカー・アステックペイント社の国内総代理店として2000年に設立。その後、塗料の自社開発、製造に乗り出し、2014年には日本塗料工業会にも入会、建築用塗料メーカーとしての活動を本格化した。特に2015年に発売した超低汚染と遮熱機能を両立した「超低汚染リファインシリーズ」がヒット、遮熱塗料で国内トップシェアに躍り出るなど存在感を高めている。

特徴的なのはその事業形態だ。設立時から流通(塗料販売店)を介さず、加盟店契約などによって個別の塗装店に直接販売する形態をとる。またメインのターゲットを住宅の塗り替え市場に置いているのも特徴的。

地域の住宅塗り替え市場で、自社元請化での成功を志す町場の塗装店などに対して、受注力を高める販促ツールやサービス、他社との差別化を明示できる商品(塗料)を提供し、顧客のB to Cビジネスを支援。塗装店との直接取引だからこそ吸収できるさまざまなニーズを製品やサービスに反映、徹底したマーケットインで顧客の成長を支援し、自社の売上拡大につなげてきた。

現在、同社が直接取引している加盟店・登録店は全国に1,400社店を超え、住宅塗装で成長を期す塗装店の多くを網羅。各地で年商3億円以上を売り上げるような"地域1番店"と呼ばれる塗装店のほとんどを顧客としており、住宅塗装市場に広く影響力が及んでいる。そして今年、ITとデジタル技術を駆使した新たな施策をスタート、顧客数の更なる拡大へ向けギアを上げた。

IT・デジタルツールで社長業をヘルプ

同社は今年2月、現場管理アプリの「現場ポケット」を正式リリースした。それまで加盟店・登録店に限定して提供していたサービスをオープン化、「当社のサービスに触れていただくことで、より多くの塗装店様に当社を知っていただく」(同社・担当者)ための施策で、顧客数の拡大が目的。

同アプリは、「現場管理にかかわるアナログで煩雑な業務を改善、効率化したい」との顧客の声を受け、自社で開発に乗り出した現場管理アプリ。2019年の供給開始以来、同社の加盟店・登録店とその関連施工店など2,000社店以上が既に利用、塗装業界で最も利用実績の多い現場管理アプリでもある。

「現場ポケット」は、現場管理者と職人との間で現場に関わるあらゆる情報を共有するアプリ。現場ごとのグループを作り、メッセージや写真を関係者全員とやりとりできる「トーク(チャット)機能」、現場作業時の重要事項が簡単に確認できる「掲示板機能」、投稿した写真を楽に整理できる「アルバム機能」などを揃え、現場管理の効率化と質の向上に寄与。操作もシンプルにし、職人など誰でも使いやすい仕様にした。 

「塗装店様では社長が現場管理を兼ねているケースも多いのですが、『現場管理の負荷が大幅に軽減、社長業に専念できる時間が増えた』など、アプリの導入効果が寄せられています」(同)と説明、塗装店の業務効率化に役立つITツールとして推奨する。初期費用0円、月額利用料8,800円と他の現場管理アプリに比べて圧倒的な低価格を実現、導入しやすい環境を整えた。 

更に今年4月、塗装業界の課題解決を掲げた情報サイト「AP ONLINE」(http://aponline.jp/)を開設した。広く一般に公開して多くの塗装店との接点を持ち、顧客数を増やすための施策。

このサイトで特徴的なのは、成長志向の塗装店が次にステップアップするための情報が盛り込まれている点だ。例えば年商数千万円の塗装店が1億円の壁を超える、あるいは2億円から3億円へのステップアップに必要なスキルといったような情報が、同社の加盟塗装店の実例で公開されており、希少性の高い情報に触れられる。

具体的には、「協力会社職人でも施工品質を保つための秘訣」や、「現場調査報告書による成約率・単価アップ」「(消費者向け)塗り替えセミナー成功の秘訣」といったような内容の情報が、実際の塗装店の実例で公開。

また、各地の有力塗装店の経営者との対談動画も公開、成功企業の経営戦略など希少な情報も得られる。全国の塗装店とダイレクトにつながっている同社ならではの情報サイトだ。「塗装店様への有益な情報を随時アップするとともに、1年以内にはEC機能も連動させ、より利便性の高いサイトにしていきたい」(同)と説明、顧客拡大へ向けたIT・デジタル戦略を加速させる。



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