打ち放しコンクリートの再現塗装に特化

打ち放しコンクリートの再現塗装の話題を追った。モヤモヤした規則性のないコンクリーの模様や風合いをいかに塗装で再現するか。規則的になりがちな人間の"癖"を克服するとともに、「施工中の目の前の壁を、遠くから眺めているような視野」も必要なのだという。打ち放しコンクリートの再現塗装に特化したペインターを取材した。


RC造の建設で普遍的な人気を誇る"打ち放しコンクリート仕上"の建物。むきだしのコンクリートの素材感とクールなテイストが融合、時代を超えて支持されている外装デザインだ。が、これらの建物、一見打ち放しのコンクリートに見えるものの、実は"塗装"でコンクリート風に再現している建物が意外と多い。

既存の建物の改修では、経年で染みついた汚れや濡れ肌の外観を、元のカッコいい風合いに戻したいといったニーズに対してコンクリート調の再現塗装で復元。新設の物件でもピンホールや目違い、ジャンカなど型枠を外した時に現れる不具合の補修は、コンクリート調の再現塗装に頼らなければならない。このように、打ち放しコンクリート仕上げと塗装とは、切っても切れない関係にあるのだ。

言うまでもなく、この塗装の肝はテクニックにある。規則性のないモヤモヤしたコンクリートの柄や風合いをどのように再現するか。通常のストレートな塗装とは違った特殊なテクニックが求められる。

横浜市の塗装会社クラウドは、打ち放しコンクリートの再現塗装に特化した施工会社。代表の増子健太さん(39)は、「この仕事ばかり20年続けてきた」というこだわりの塗装職人でもある。

現在は、打ち放しコンクリートの建物の再現塗装を責任施工で展開しているピアレックス・テクノロジーズ(本社・大阪府泉大津市、廣瀬直輝社長)の協力会社として活躍。打ち放しコンクリートの再現塗装に特化し、年間に100件以上の施工をこなしているという。ピアレックス社が、「ウチの看板の協力会社」(廣瀬社長)と信頼を寄せるパートナーだ。

目の前の壁を遠くから眺めるイメージ

先日、ピアレックス社が請けた改修工事の現場を取材できる機会があり、打ち放しコンクリート仕上の再現塗装の現場を訪ねた。

物件は築30年ほどのRC造の集合住宅で、開放廊下を中心に打ち放しコンクリート仕上の壁が広がっている。長年の間に蓄積した汚れや濡れ肌のしみでクールな意匠が劣化。これを同社の改修工法「G-PFシステム」で新設時の装いに復元する工事だ。

施工はもちろん、打ち放しコンクリート再現塗装のスペシャリスト、増子健太さん率いるクラウド。「専用プライマーの後にG-PFベースで着色、その上にコンクリート調の模様描画を施し、最後に光触媒コーティングでフィニッシュ」と工程を説明。「その中で、コンクリート調の模様描画が、やはりボクらの腕の見せどころ」と増子さん。

模様描画とは、いわゆるコンクリートの不規則でモヤモヤした表情を描き出す特殊技法のこと。自作のウレタンマットでポンポンと壁面を叩きながら陰影やグラデーションをつけ、コンクリートの風合いを表現していく。

「叩き方に規則性みたいなものが出てしまうと仕上がりも人工的になり、"つくりもの"っぽさが出てしまう。ウレタンマットの角度や叩く位置、叩き方の強弱など、いかにランダムに叩けるかがコンクリートの自然な風合いを表現するポイント」と説明。加えて、「目の前の壁を叩きつつ、遠くから眺めた俯瞰的な視点も同時に持つ」ことで壁全体のバランスが整えられるという。まさに打ち放しコンクリート再現塗装のスペシャリストの技だ。

コンクリートの描画で使っているウレタンマットも、「物件ごとにカッターやペーパーで加工し、その建物に似合うコンクリートの柄になるよう工夫しています。どれくらいの加減でマットを削ればいいのか、細かいことだけどその辺もノウハウかもしれませんね」とこだわりを見せる。

「以前はいろんなメーカーさんの仕事をしていましたが、いまはピアレックスさんの仕事に専念している」と増子さん。「打ち放しコンクリートの再現塗装に特化している分、仕上がりのクオリティーにはこだわっています。細かい調色対応や試験施工の立ち合いなど、ボクらと一緒になってクオリティーを追求してくれるのが、材料供給だけの他社さんと違うところ」と、同社の仕事に専念している理由を説明。

ピアレックス社の廣瀬社長も、「仕上がり品質はもちろん、設計や元請会社さんへの対応、立ち居振る舞いなど協力会社さんの現場でのパフォーマンスが新たな仕事を呼び込んでくれている。増子さんたちは当社の強力な営業マン」と絶大な信頼を置く。

同社は現場施工向けの光触媒塗料「ピュアコートシリーズ」の製造販売の一方で、打ち放しコンクリートの再現塗装を責任施工で展開。今回登場したクラウドを始め全国で11社の専門協力会社を組織して旺盛な需要に対応、実績を伸ばしている。今年度は初の10万㎡超えを実現、存在感を高めている。



互いに信頼を置く増子健太さん(左)と廣瀬社長(右)
互いに信頼を置く増子健太さん(左)と廣瀬社長(右)
道具はウレタンマット。現場ごとに加工。
道具はウレタンマット。現場ごとに加工。
「こんな感じで叩きます」とデモンストレーション
「こんな感じで叩きます」とデモンストレーション

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