屋根塗装の難題、 新工法で強度倍に復元

屋根塗装時の縁切り部材「タスペーサー」の製造販売元・セイム(茨城県守谷市、社長・倉持忠行氏)は、コロニアルなど平板スレート屋根の塗装工事の懸案であった屋根材の「割れ」を解決する補修工法を確立した。通常の屋根材の2倍の強度に復元する完成度の高い工法で、塗装工事の品質向上と施主の信頼獲得に貢献する。屋根補修工法のスタンダードを目指す。


戸建てなど低層住宅の塗り替えリフォームにおいて施工業者を長年悩ませている問題がある。屋根材で多用されている平板スレート瓦の割れの問題だ。「1棟当たりで数カ所の割れがあるのはざら」(塗装業者)というように、割れのトラブルは頻発している。

特にアスベスト使用禁止以降のスレート屋根材は強度が落ちており、割れやすいことが指摘されている。太陽光発電設置に伴う荷重や工事でのダメージ、塗装工事の現場調査の人の歩行で割れてしまうケースも少なくない。

本来、割れた屋根材は差し替えが原則だが、屋根業者に別発注するコストを嫌ってコーキングの応急処理だけで済ませているケースが多い。風雨や紫外線をまともに受ける屋根の上でコーキングが長持ちするはずもなく、やがて割れが再発し雨水が浸入、塗装工事をした意味をなさなくなる。屋根の割れに対するその場しのぎの対応が塗装工事の信用低下にもつながりかねない。

同社では、こうした市場の実態を受け「塗装業者さんでもできる高品質の屋根補修方法」(倉持忠行社長)を念頭に開発に着手、ほぼ3年をかけて「通常の屋根材の2倍の強度。再度割れることはまずない」(同)という完成度の高い補修工法を確立した。平板スレート屋根材専用浸透型接着剤「タスマジック」(商品名)を中心とした屋根材補修商品として来月から販売を始める。

開発した補修工法(図1)は、①割れたスレート瓦の下(裏側)に専用の樹脂シートを挿入②タスマジックをひび割れに沿って注入し、ヘラでならす③硬化後に樹脂シートを抜き取る―だけの簡便作業で、特別なスキルは必要ない。夏は2時間、冬は3時間ほどで完全硬化し、硬化後は水系、溶剤系の塗料を通常どおり使用できる。

ポイントの1つは屋根材の裏側に樹脂シートを挿入するという着想。ひび割れに注入した接着剤が下層の防水紙に触れると、屋根材と防水紙が接着し通気性を阻害してしまう。同社では樹脂シートを間に挟むという発想でこの問題を解決。接着剤の硬化後は不要になった樹脂シートを抜き取ればよく、挿入と抜き取りをスムーズにできる樹脂シートの形状や加工など工夫を凝らした。樹脂シートは「タスフィルム」の商品名で販売する。

そして特筆すべきは、スレート屋根材専用に開発した接着剤「タスマジック」の性能だ。同品で補修したひび割れは、通常の屋根材の2倍の強度に達するという試験結果が出ており(図2)、極めて高い補修強度が得られる。スレート素材に適合した樹脂の選定とブレンド、ひび割れや素材への浸透性など丹念な実証を繰り返して開発に漕ぎ着けた。

また、1回使い切りタイプとし、注入のしやすいパッケージを開発するなど作業性にも配慮。10袋/箱×5箱単位で販売する。

品質の"見える化"で信頼性アップ

屋根は問題の多い箇所だ。風雨や紫外線などもともと過酷な環境にあるにもかかわらず、施主の目が届かないため施工がずさんになりがちという矛盾を抱えている。

ここでのミスや手抜きは深刻な結果を招く。防水シートによってトラブルが露見するまでに時間かかるため、気づいたときには雨水で野地板がボロボロに腐っていたというケースも多く、より大掛かりな修繕が必要になる。

逆の見方をすると、トラブルが多い場所だけにしっかりとした対応策を示すことで施主の信頼を得るチャンスも高まる。同社の主力商品「タスペーサー」も、屋根の排水と通気に欠かせない縁切りを確実に行え、かつ施主に"見える化"できる工法として施工者の支持を獲得、ヒット商品になった。

今回の「タスマジック工法」も、平板スレート屋根に頻発している"割れ"への対策として非常に説得力が高い。もとの屋根材の2倍の強度に復元するという性能がその根拠。現調で撮影した割れた箇所の画像を見せながら、自作した施工サンプルなどで対策法をビジュアルに見せれば効果は絶大だ。相見積もりが常態の市場の中で、施主の信頼を勝ち取る大きな武器になる。

「リフォームにおけるお客さんの最大の悩みは業者の選択。言い換えれば、安心できるしっかりとした業者に任せたいということ。その要望を目に見えるかたちで示すことで施工会社の大きなアドバンテージになる」(倉持氏)と、ひび割れ補修の有用性を説く。

商品は、接着剤の「タスマジック」、樹脂シートの「タスフィルム」と、タスフィルムを挿入するためのスチールプレートも揃え、個別とセットの両方で販売していく。また施工HOW TOの無料DVDも用意、ひび割れ補修のスタンダード工法として普及を目指す。なお同工法は特許出願中。



図1:タスマジック施工の概念図
図1:タスマジック施工の概念図
図2:屋根材の荷重試験結果
図2:屋根材の荷重試験結果
タスマジック
タスマジック

HOME建築物 / インフラ屋根塗装の難題、 新工法で強度倍に復元

ページの先頭へもどる