素材感損なわない初の難燃塗料
大日技研、帝人、大丸興産が共同開発

水性無機塗料メーカーの大日技研工業(本社・東京、社長・中村満治氏)が帝人及び大丸興業と共同で開発した水性透明難燃塗料に注目が集まっている。木材だけでなく紙や繊維、ゴム、プラスチックなど多様な素材に塗布できることに加えて、「素材の風合いを生かす高い透明性と難燃性を両立した世界初の水性難燃塗料」(大日技研工業)と説明。素材感や色を損なわないことから建材、壁紙、ファブリックなどさまざまな製商品分野から引き合いが押し寄せている。


開発した水性透明難燃塗料の商品名は「ランデックスコート難燃クリア」。特殊変性アクリル樹脂バインダーと難燃剤からなる1液常温乾燥型の新規難燃塗料で、大日技研工業が製造し、大丸興業が総販売元となって市場展開する。9月1日に発売された。

特長の1つは高い透明性と難燃性を両立した点。木材など可燃物に難燃効果のある塗料は既に市場にあるが、エナメルタイプが多い他、クリヤータイプであっても被塗物が濡れ色になるなど素材の風合いを損ねる点が指摘されていた。

同品は木材に塗布しても濡れ色にならず素材の色や風合いがそのまま生かせる。例えば障子紙に塗っても、乾燥後には濡れ色が消失、色や素材感に変化がない。このため木質建材やファブリック、壁紙などデザイン性を重んじるインテリア商材への応用可能性が高まり、「それらの企業からの引き合いが殺到している」状況。

高い透明性と難燃性を両立した点に加えて、幅広い素材に適応できるのもセールスポイント。

難燃剤として用いている帝人のリン系難燃剤「FCX-210」は、少量の添加でも高い耐熱性と難燃性を付与するとともに、さまざまな樹脂に応用できることからOA機器や家電製品、ゲーム機器、自動車などの樹脂製品に広く使われている。木材や繊維製品に限らず、ゴムやプラスチックなど多様な分野への利用可能性を広げた点と、難燃剤の少量添加による透明性の確保など同難燃剤を用いたことによるメリットを打ち出した。「この難燃剤と適合するベストな樹脂バインダーの選定と配合のバランスで濡れ色にならない難燃塗料の開発に成功した」(大日技研工業技術部課長・佐藤康弘氏)と経緯を説明。

更に他の難燃塗料と、難燃メカニズムが異なるのもポイントだ。

物が燃える"燃焼現象"は、熱源から発せられた熱が物に伝わり(輻射)、物が熱せられて熱分解し可燃性ガスが発生、そのガスが酸素と反応することで燃焼が起こる。従ってこのサイクルのどこかを遮断することで燃焼を止めることができる。

市販の難燃塗料は塗膜が燃焼して炭化層を形成する、あるいは塗膜の燃焼で成分の脱水反応が起き、水蒸気の吸熱で延焼を抑える技術を採用している。これに対して、同品は可燃性ガスを不活性化する"ラジカルトラップ"技術を採用しているのが大きな違い。「炭化層形成の場合、火の立ち上がりが強いのに対してラジカルトラップは火の立ち上がりそのものがない」(帝人樹脂新事業推進部門担当課長・佐藤隆宏氏)と難燃機能を説明、安全性の高さを強調する。

社会が求める難燃塗料

2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行され、建築における木材の需要増が期待されているが、いまひとつ盛り上がりに欠ける。それらの建築では木材の風合いを生かすため現(あらわ)しで使いたいとの要望が強いが、防火・耐火の課題が横たわっているためだ。新製品はこうしたニーズにフィットする。

一方、住宅火災は年間1万1,000件を超え、それによる死亡者は約900人に上る。そのうち65歳以上の高齢者が70%を占めているように、その主な要因は逃げ遅れによるもの。このため、室内で使用する建材や壁紙、ファブリックなどへのより高い難燃性の付与が求められている。「室内にあるさまざまな可燃物に、『塗る』という簡便な行為で難燃性を付与し、燃焼までの時間を遅延させられる。今後の高齢化社会を鑑み、社会的意義が非常に大きい」(大日技研工業執行役員・湯浅富夫氏)と期待を込める。

9月1日の発売から1週間の間に、国内外のさまざまな企業から数百件の引き合いが寄せられており「予想以上の反響」(湯浅氏)と、透明かつ多素材対応の難燃塗料のニーズの高さをうかがわせる。

「ランデックスコート難燃クリア」は常乾型水性塗料で、刷毛、ローラー、スプレーガンのいずれでも塗装可。JIS A 6909の耐候性、疎水性、防汚性、防カビ性を兼備している。

問い合わせは販売元の大丸興業・産業資材部TEL.03-3820-7096



燃焼のイメージ図
燃焼のイメージ図

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