インクジェット技術で塗着効率100%へ

ロボットメーカーのABBジャパン(本社・東京都品川区、代表取締役社長・中島秀一郎氏)はインクジェットヘッドによる塗着効率100%の塗装技術を開発。自動車塗装で使用される2トーン塗装がマスキングなしで可能となるため、生産性向上、塗装ラインの省スペース化、環境対策といったメリットを実現する。次世代塗装の新技術として、最終的には車体全体の塗装を見据えており、まずは屋根部のような水平面の水性塗装での採用を目指している。


ABBのインクジェット技術を使ったPixelPaintシステムは、車の意匠性の高まりに伴って2トーン、あるいはデコレーションペイントと呼ばれるさまざまな意匠を実現するために開発された。

装置は塗装ロボットとインクジェットヘッドで構成されソフトウェアを組み込んでいる。塗料を噴霧するというよりも、画像データを作成しそれを塗装表面に復元するという考え。実際に塗っている際のロボットの動きとインクジェットの動きを連動させる必要があるため、プロセスコントロールを制御するソフトも必要となる。

塗料供給装置はロボットの3軸上のアーム内に格納、インクジェットコントローラーシステムは3軸の根元及びPixellPaintに入っており、プリントヘッドへの画像転送並びに吐出条件の決定機能を有する。塗装ブース内は防爆環境のためその対応も行っている。

ヘッド原理として、ヘッドにはインクジェットのノズルがいくつも組み込まれているが、ノズルにはピエゾ素子を採用。ピエゾ素子は電圧を加えると変形する仕組みがあるので、ポンプの押出機構を行う。

具体的には①ノズルの周りの塗料を適切な圧力に保つ②ピエゾ素子を駆使しノズルから塗料を押し出す③液滴をノズルから引きはがし、塗料の粒子を噴射する④次の塗料を容量に充填するという流れ。

中島社長は「ベル型塗装機はアトマイザーと言われるように微粒化機構。微粒化は言うなれば粉体を細かくする技術と本質的には一緒なので確率論的なプロセスとなる。従って塗装効率を100%にすることは機構上限界がある。インクジェット方式の採用により確率論から決定論的なプロセスに移行できるので塗装効率100%の実現が可能になった」と述べる。

インクジェット技術を塗装システムとして成立させるためにABB独自の工夫を行っている。

1つ目は液滴を連続的に作る方式、2つ目は液滴サイズを20~50μmまで制御できるようにした。なお、液滴サイズが小さいため塗料の中に金属が含まれるメタリック塗料には現時点では対応できない。3つ目として、インクジェットのノズルの数を最適に設定して装着している。

PixelPaintではベル型塗装機と同様にロボットの動きとプリントヘッドの動きを連動させる必要がある。小さい液滴が連続して吐出されるため、塗装面とプリントヘッドの距離は短く(3mmほど)して動かす。

そのため「ロボットの動きとプリントヘッドの挙動、この2つの動きの同期精度の要求はこれまでよりも高くなる」(中島社長)。

PixelPaintが導入されると、塗着効率100%のためマスキング作業が不要で2トーン塗装が可能。時間とコストのかかるマスキング、脱マスキング作業及びスペースが不要となる。

中島社長は「ヘッドに注目がいきがちだがヘッド、ロボット、ソフトを含めた一体システムとして提供する。導入に当たっては単なるシステムの提供だけではなく、工程変更の段階から相談に乗りたい」として自動車向けに展開する方針を示す。



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