塗装専業向けに開発、生産管理システム本格展開

工業塗装の現場でより効率的な生産管理が広がりそうだ。塗装専業者の久保井塗装(本社・埼玉県狭山市、代表取締役・窪井要氏)は工業塗装工場用生産管理システム「KCW-CMS(Kuboi Coating Works-Coting Management System)」の本格展開を開始した。5月には電着塗装工場用に特化した生産管理システムを新たに追加。より幅広い塗装専業者に向けシステムでの生産性向上を支援する。


 久保井塗装は主に自動車のプラスチック部品の塗装を行う塗装専業者。近年では戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)にも採択され、放熱塗装や抗菌塗装を独自開発している。

 同社の生産管理システム開発のきっかけは、2015年からISO9001の文書管理・保存の規定が変わり、デジタルでの保存も可能になったことから。「ISOにも適合しており、塗装専業者がより効率的に使用できるシステムを自社でつくれないか模索していた」と振り返る。そして昨年自社で工業塗装専用生産管理システム「KCW-CMS」を開発。自社でも使用する他、塗装専業者への導入提案を行っている。

 同システムの主な機能は塗料の発注・在庫管理、被塗物の管理、塗料調合の管理の3つ。塗料などの発注漏れや塗料混合時のヒューマンエラーを防止する機能が盛り込まれている。「人は忘れていく生き物。システムを使ってヒューマンエラーや『忘れた』を極力防止することで、本来人がやる作業に集中できる」と同社の生産管理システムのメリットを訴える。

 塗料の在庫管理では、塗料缶ごとに固有のQRラベルを貼ることで保管場所や塗料を一元管理できる。工場の規模が大きくなると、塗料を探すだけで時間がかかるもの。「特にスプレーマンが手配などをミスした場合は心情的にも自分で探さなければいけないという責任感が生じる。塗料を探す時間をなくすことで工場の生産性を高く保てる」(窪井社長)と効果を説明する。

塗料だけでなく、塗装を施す製品も納品時にQRコードを貼り付けて管理。現場では以前納品された製品が余っている場合もある。手元のタブレットやパソコンで在庫状況が把握できることで適正な受発注に寄与する。仕様書などから製品1つでどのくらいの塗料を使うのかを登録することで、製品の数から必要な塗料使用量を計算。更に製品と塗料在庫を紐づけており、パソコン上で管理している生産計画の中で塗料や製品が不足している場合は発注を促し、塗料と被塗物の発注漏れを防ぐ。

 塗料調合の管理機能では主剤・シンナー・硬化剤など、塗料ごとの調合比率をあらかじめ設定することで、塗料ポットに投入した主剤に調合するシンナーや硬化剤の必要量を自動計算。例えば調合作業中に電話などで呼ばれた時など、今やっている作業がどこまで進んだのか分からなくなることがある。その時には重量から何をどこまで入れたのかシステムが判断するため、塗料の間違いや混合比率の間違い、投入漏れといったヒューマンエラーを防止する。

 検査時にはタブレットを使い製品ごとに設定した検査項目を入力。入力された数値はリアルタイムで不良率計算ができ、不良率の推移を把握しながら塗装技術者へのフィードバックもタイムリーにできる。実際に同社の不良率はシステム導入により1%台と従来の半分ほどになっている。

電着塗装にも対応

 この生産管理システムに、この度電着塗装で必要なハンガー管理とレーン管理の機能を追加。ハンガーには個別の耐熱QRコードを付与し、レーンに設置したカメラから読み取ることで塗装する製品を管理する。

 ハンガーの種類と取り付ける製品の種類を紐づけて管理することで取り付け間違いを防止する。塗装ラインの入口から出口までの距離を設定しておくことで、ラインから出てくる製品の種類が分かるため、次の作業の段取りが円滑になるメリットがある。

 担当者の持つタブレット端末には製品が出てくるまでの時間などの情報が表示されるため、事前準備が明確になり、作業効率の向上に寄与する。また、カメラの前を通過した回数でハンガーの使用回数をカウント。設定した上限を超えた時は知らせてくれる機能もある。ハンガー剥離のタイミングを正確に把握できるのも特徴の1つ。

 導入を検討する企業には、まずは要望をヒアリング。既存システムとの連携などカスタマイズが必要なケースにも対応している。導入決定後は、導入企業側は使用する塗料や塗装する製品をシステムに登録し運用開始となる。「まずはよく使用する塗料や製品を登録し、徐々に登録製品を広げていく形での運用を勧めている」と窪井社長。導入前には研修を行うことでスムーズな運用を支援する。

 窪井社長は「導入を検討している企業の中には『在庫管理システムは既に使用しているため塗料の調合の機能だけが欲しい』などの声もある。そのため、塗料の在庫管理だけ、調合機能だけといった一部だけの導入提案も考えている」とシステムの機能の一部だけを販売することも視野に入れている。

 なお、同社の開発したシステムは2020年、2021年に経済産業省の「IT導入補助金」のITツールに認定されており、導入時に補助金を申請することも可能となっている。

   問い合わせTEL042-958-5763



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