日本流行色協会主催の「オートカラーアウォード2021」で、トヨタ自動車の「LEXUS LS500h/LS500」と日産自動車の「アリア」がグランプリに輝いた。グランプリを2作品が同時に受賞するのは1998年の開催以来初。
近年ではカラーデザインだけでなく社会課題への向き合い方が自動車産業にとって重要性が増している。
日本流行色協会の大澤かほる氏は「4、5年前にはブルーやグリーンなど水や木々を思わせるサステナビリティへのアプローチを想起させる傾向だったが、今年はカッパーや黄土色、ゴールドなど暖色系が多くノミネートされた」として、新たなカラーデザインの傾向を見据える。
同時に「技術面では水性塗料や内装にエコな素材を使用するなど、社会課題へのアプローチも見られた」(大澤氏)と分析する。
トヨタ自動車は「月の道」という美しい情景をモチーフに、内外コーディネーションで具現化。エクステリアカラーの銀影ラスターは、影の部分の漆黒さが特徴であり、光の少ない闇夜にもわずかな光を捉え、輝きを放つカラー。薄膜層で平滑に並ぶ蒸着アルミにより、陰影の強さと深さを際立たせ、鏡のような光沢と強い金属反射を実現した。
インテリアには黒の室内色を背景に、月明かりが照らす波の揺らぎを、銀糸を用いた西陣織で表情した。「以前から伝統工芸をデザインに織り込んでいたが、更に進化させている」(審査員の島村卓実氏)。
一方、日産自動車は日本の伝統である「禅」とEVという最先端技術を融合した。「日本人のイメージする禅ではなく海外から見た禅のイメージを生み出した。綺麗で静かな内装と、太陽を思わせる外装の2つのコンビネーションが美しい」(島村審査員)。
エクステリアはエネルギーを開放する1日の始まりをイメージしたサンライズカッパーとミッドナイトブラックの2トーンカラー。低温焼付型の水性塗料を採用し環境にも配慮した。インテリアはブルーを基調とし、EVのパイオニアとしてのイメージを表現した。
また、特別賞には内装にコルクなどのサステナブルな素材を取り入れたマツダ「MX-30」「MX-30 EVモデル」が選ばれた。
大澤氏は「アリアのエクステリアは太陽が昇っていく夜明けのイメージ、レクサスは月を思わせる鉱物の色など私たちの生態系を育んでいる色が1つのトレンドとして見られた。これからの時代はサステナビリティや文化の継承、人権の問題などさまざまな社会課題に対してどのように取り組んでいくのかを表明していく時代。それぞれの課題に対して企業、デザイナーや色彩に関わるものがCMF(色、素材、仕上げ)デザインでどのように表現していくかが問われる。その一端を垣間見られた年だった」と全体を総括した。
◇オートカラーアウォード:モビリティのカラーデザインの企画力や形との調和など、内外装すべてのカラーデザインを評価する表彰制度。①市場に影響を与えたか②モビリティのカラーデザインとして企画、発想が優れているか③デザインの企画、発想が他業種の手本となりえるか④従来にない色域に挑戦して成果をあげているか⑤狙い通りのカラーが表現されているか⑥モビリティ全体でカラーの調和が考えられているか―を基準に審査。今年は12車種がノミネートされた。