塗料技術で燃費効率化を促進

海運・造船業界の一大イベント「バリシップ2023」が5月25日から3日間、愛媛県のテクスポート今治で開催された。コロナ禍を経て4年ぶりとなった今回は、過去最大となる351社が出展、1万6,000人以上が来場、造船の最新技術やサービスが一同に集結した。中でも目立ったのが今年スタートした燃費に関する規制であるEEXI規制、CII規制に関連する製品やサービス。その中で、塗料メーカーは塗料の技術に加え、燃費を最適に維持するためのサービスで船主のCO2削減をサポートする。


国際海事機関(IMO)は海運業界の脱炭素化に向けて、2030年までに船舶のCO2排出量を少なくとも40%削減、2050年に70%削減することを目標に掲げている。この目標達成のため、IMOの委員会・海洋環境保護委員会(MEPC)は2021年6月に船舶の燃費に関する規制であるEEXI規制、CII規制を採択、2023年1月よりスタートした。

EEXI規制とは、400GT(総トン)を超える既存船舶の燃費性能を一隻ごとに評価。船種ごとに定められた規制値に達していない船舶に対して、機関出力制限や省エネ改造により、新造船と同レベルの燃費性能達成が義務付けられた。

一方、CII規制とは、既存船における1年間の燃費実績を5段階で格付け。低評価の船舶に対しては、改善計画の提出と主管庁による承認を義務付けることで、継続的な省エネ運航を促進する。2023年には2019年の燃費実績よりも平均で5%低減する必要があり、その後も段階的に燃費を向上させていく必要がある。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた世界的な機運の高まりを受け、CO2回収装置やバイオ燃料の開発、船舶性能の見える化システムなど脱炭素化を目指した技術が台頭してきている。その中で、今回同展に出展した船底塗料メーカーは海洋環境負荷軽減や燃費を落とさない塗料技術に加え、塗膜の解析システムや航路などから最適なメンテナンス時期を提案するサービスを提供することで燃料消費を最適化する動きが出てきている。

中国塗料は、データ解析によって船体性能を可視化するシステム「CMP-MAP」を紹介。船体性能や船体表面粗度、運行環境から最適な防汚塗装仕様や塗り替え時期を提案する。「海洋生物の多い高汚損地域を航行する厳しい環境でも4年間で平均スピードロス1.4%と良好な結果も出ている」と自信を示した。

関西ペイントマリンは燃費就航解析システム「KPM-PASS」を活用した仕様提案の最適化を目指す。ユーザーから提供してもらった船舶の就航データを独自プログラムに取り込んでデータ処理し解析する。更に、提携先のJotun(ヨートン)社のシステムを活用し、航路、船速分布、水温分布などを合わせて、就航性能や燃費性能を可視化する。

アクゾノーベルコーティングは「Intertrac HullCare」を紹介。船の速度を測定し、船底塗料の効果が発揮されているかを検証し、分析結果からメンテナンス時期の検討などに生かしている。「1%のスピードロスを保証している他、世界中に拠点があるため、世界の主要なドッグでメンテナンスができる」とメリットを訴えた。

日本ペイントマリンは燃費を最適化するソリューションとともに、独自のナノテクノロジーを使用して親水性と疎水性のナノドメイン構造を採用した「FASTAR」を出展。「実績も確実に伸ばしてきており、船舶の燃費に対して具体的に効果が出る製品」とアピールした。



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