住宅塗装専門店、見えてきた年商100億円の道程

住宅塗装市場のトップランナー、ミヤケン(本社・群馬県前橋市)の宮嶋祐介社長(写真)に話を聞いた。いち塗装職人から会社を興し、自社元請型の住宅塗り替え専門店として躍進、全国の塗装店のベンチマークになった。コロナ禍にあってなお成長を続け、10年後の2033年には年商100億円の目標がクリアになった。その土台となる"人財"の育成にこそ、揺るぎない自信がある。


----コロナ禍での住宅塗り替え市場はどのような状況でしたか。

「同業者との間でもよく話題に上るのですが、塗装リフォームへのコロナの影響は少なく、却って売上が伸びたという会社さんも多いですね。コロナ禍の自粛生活で消費の向かい先がなく、リフォームに流れてきたという理由があるのだと思います。ただ、コロナ禍の制限が解除され旅行やレジャーなどに消費が向かいだしたことや、急激な物価高の影響もあり、昨年の8月頃から潮目が変わってきています」

----その中で、ミヤケンさん自体の事業はどのように推移していますか。

「前年比120%前後の成長を続けるという方針を確実に達成しています。コロナ禍での業績を大まかに見ると、2020年7月期が15億円、21年17億円、22年が20億円、そして今年7月期の目標が23億円で、その達成が現時点(3月)でほぼ確実になっています」

----成長の要因は何ですか。

「ひとつは多店舗化ですね。それまで群馬県内の4店舗で展開していましたが、2020年に初めて県境を越え埼玉県に浦和店を出店しました。続けて川越、大宮に出店し、埼玉県内で現在3店舗を構えています。出店から3年目の浦和店で3.3億円、2年目の川越店で2.8億円を既に達成しており、早期に軌道に乗せることができました。新規出店で結果を出すには、認知度をいかに高めるかがセオリーです。新規出店に際しては、圧倒的な宣伝広告で認知度を高めるこれまでの戦術を踏襲し、結果につなげられました」

----多店舗化が理由のひとつということですが、他にもあるのですか。

「扱う商材を増やしました。給湯器としてポピュラーになった『エコキュート』の取り扱いです。給湯器は生活のインフラですから、壊れると交換に緊急性を要します。このため、注文があれば即日設置できるよう在庫を多く抱えるようにしました。在庫を持つリスクはありますが、その分、仕入先との強力なパイプを築けます。ご存じのようにコロナと戦争でエコキュートも品薄となる中、即日提供できる体制が奏功し、順調に事業が立ち上がりました。家の外回りを見る塗装営業との親和性もあり、同じ人員体制で売上を伸ばせる商材としてはまりました」

----多店舗化にしても、商材を増やすにしても、それらをオペレートする人材がやはり重要になりますね。

「その通りです。人財こそが事業の原動力であり、その採用と育成が私自身の最優先の仕事です」

----数年前に、新卒(大学)採用を始められました。続いていますか。

「ええ、10年前から始めており、この春入社した子たちがちょうど新卒10期生になります。現在の社員数70名ほどのうち既に6割を新卒採用の社員が占めており、コアな層になっています」

----失礼な言い方ですが、経験の浅い、若い人たちでそれだけの業績を出している。秘訣は何ですか。

「ひとつは教育システムだと思います。営業部門では、初動からクロージングまでのお客様対応をカリキュラム化した動画を題材に、毎週勉強会を継続しています。例えば、お客様に断られたときにどう切り返すかなど、かなり細かいところまで網羅した動画を30本ほど用意しており、それを繰り返し学ぶことで"平均点"を出せる営業マンを育てています。当社の成約率は平均で65%ほどですが、全員がその平均点を出せるよう、動画を始めとした教育システムを整えています。先々月の売上ランキングでは新卒2年目の社員が2,000万円を売り上げて1位、同じく2年目のもう1人が1,800万円で3位につくなど早期の戦力化を実現できています」

----社員さんのモチベーションが高そうですね。

「ええ、そこをいかに高めるかが人財教育の要でしょう。教育にはスキルとマインドの両面があり、教育システムを機能させるためにもマインドの部分がより重要になります」

----そこではどのような取り組みをされていますか。

「コロナ禍になって始めたものにZoomを使った『理念勉強会』があります。仕事や人生を充実させるためにはどのような心持ちや行動でいればよいか、私自身が講師になって価値観を共有する勉強会です。職人やパートさんを含めた全従業員をZoomでつなぎ、毎週1回、皆が参加できる昼の12時からキッチリ30分、時間を決めて勉強会を続けています。といっても堅苦しいものではなく、笑いを交えながら、それでも大切なことがスッと入っていくよう進めており、手前味噌ですが嫌々参加している人はいないくらい皆の間に根付きました。勉強会で学んだことを実践している光景が日々の仕事の端々で広がってきており、マインドが育っていることを肌で感じます」

----人財が成長の原動力ということですね。

「人口や世帯数が減り、高性能な建材が増える中でマクロ的に見れば住宅の塗り替え市場は縮小していくでしょう。一方で業者数は増える傾向にあり、競争がより激しくなるのは必至です。その中で成長を維持していくためには、多店舗化の推進と商材の拡充がやはり基本戦略になります。従って、それを支える人財の育成こそが最優先事項であり、そのための仕組みづくりはある程度整ったと自負しています。それに則り、今の成長率を維持していけば、10年後の2033年に年商100億円の目標が立ち、その道程も明確に見えてきました」
 ――ありがとうございました。



宮嶋祐介社長
宮嶋祐介社長

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