自動車補修塗料を主力に国内事業を展開するアクサルタコーティングシステムズ。今後は工業用分野への展開についても強化していく方針を掲げる。1月1日付で社長に就任した齋藤友良社長に国内市場の見方と今後の事業展開について聞いた。

----依然としてコロナ禍が続いていますが、貴社の事業領域における市場をどのように見ていますか。

「まず自動車補修で言うと、2021年度の業績は2020年度と比べるとプラスを達成しており、市場は回復傾向にあると感じています。ただ市場全体で言うとコロナ前には届いていないと見ています。基本的には工業用分野も同じ状態と言えます。自動車生産台数は半導体不足の影響もあり思うように推移していない中で、我々の工業用塗料も自動車関連用途もあるので同じような影響は受けています。一昨年よりは回復しているものの、コロナ前には戻らずといったところです」

----その中で、塗料品目による動きの変化は見られますか。

「粉体塗料においては、社会的に環境というキーワードが高まっており、当社も昨年は2桁成長でき、今後も伸びていくと見ています。国内の塗料の総需要が右肩上がりとはいかない状況の中で、粉体塗料は環境というキーワードにおいてはまだ伸びるチャンスがあると思うので一層力を入れていくつもりです。ただいずれにしても当社は自動車補修分野がメインですので、自動車補修に軸足を置く姿勢に変わりはありません」

----工業用分野の展開については。

「我々はグローバルで展開している会社ですので、『需要は海外にスペックは日本で』というケースがあり、そこへの対応は日本としてやっていきます。例えばアメリカで需要がある(生産する)日系のお客様がR&Dは日本で行うといった状況です。その場合当社がスペック活動を日本で行うことになります。一方、自補修分野においてもアクサルタは自動車補修塗料で世界シェアトップですので、色の対応、日本のOEMサポートなどは日本チームの担当となります」

----自動車補修市場は縮小傾向が続いています。

「需要そのものは決して右肩上がりではないことは理解しています。ただ一方で、人手不足の時代であり自動車板金塗装のお客様はより効率化を求めています。もう1つのポイントは環境対応です。環境対応について、当社の水性化の比率は毎年上がっています。現状当社はベースコートでは売上の3割以上が水性塗料となっています。市場全体ではそこまで水性化が高まっていない中で、当社の塗料は第3世代に入っており改良を重ねて今に至り製品力で優位性を示せます」

----水性化はやはりカーディーラーの大規模工場がほとんどですか。

「決してカーディーラー様だけでなく、独立系ボディショップ様も従業員の環境や将来的なトレンド見据えて水性塗料に切り替えるケースも多いと思います」

----先ほど話のあった"効率化"ニーズへの対応はいかがですか。

「測色機の提案を進めており、2017年に上市したアクワイヤー™クワンタムEFXの販売が順調に伸びています。昨今では測色機の性能で塗料を決める傾向が見られます。短時間で色板に一番近い色が出せるかが効率化には重要となるためです。自動車板金塗装のお客様の効率化をどう支援させていただくかにおいて、測色機による調色時間の効率化、そして最新のテクノロジーを使用した湿度硬化型速乾のクリヤコートの提案などで貢献していきます」

----一方で、工業用塗料分野はどの分野に注目していますか。

「1つのキーワードはEVです。昨年12月のコーティングジャパンにブース出展しましたが、EVモーター用のワニスとEVバッテリー用の粉体塗料などの展開を進めていきます。EVは世界的に大きなトレンドにあり、実際問い合わせもいただいています。日本のお客様がEV化するにあたって、できることがあると考えています。これらの製品はこれまで強くは紹介してきませんでしたが、EV化で急激に需要が増えることが予想され、需要獲得のチャンスがあるはずです」

----製品紹介の仕方として、コロナ禍で変化はありますか。

「今回思ったこととして、我々は全国各地の地区販社制で展開していますが、自由にお客様に訪問できない中でも全国の地区販社様のおかげでビジネスが滞りなくできたと改めて感じています。その意味でも地区販社様、代理店様の役割がこれまで以上に大きくなっています。我々の支援として、今取り組んでいるのが塗装方法や製品説明について、もちろん対面がベストなのですが、YouTubeなどの映像の活用を予定しています。グローバルでトレーニングキッドを開発中(日本語対応可)で、近い将来お客様にご提示できると思います。今後、訪問できない状況でもできる体制作りは必要です」

----グローバル規模で物流の混乱が見られていますが影響はありますか。

「コロナ禍の影響による物流混乱は、日本の事業においてもあります。しかし、日本法人としては『モノが来ないからしょうがない』では済ませられません。アクサルタはアメリカ、ヨーロッパ、アジアに工場が何カ所もあるので、例えばこれまではヨーロッパ拠点からしか調達しなかった製品をアジアから調達するなどソースの多元化を行っていきます。お客様にご迷惑をかけない体制の構築です」

「これまでは船が出れば予定通りに着いたのですが、今は当たり前ではなくなっています。そのため、途中経過の把握などを物流部門だけでなく営業や関係部署の皆で対応するプロセスを作り、アイデアを出し合っています。ソースの多元化を効率的に運用するためにもタスクチームを設置しています」

----ありがとうございました。