市場の変化を活力にする

DIY塗料メーカーの和信ペイントは、来年早々にも木床、シート材双方に適応する「フローリングコート」を発売する。難密着材であるシート材への塗装を実現し、木床材との併用を可能にしたのが特長。素材違いによる購入ミスを防いだ。同社はPB化が加速するホームセンター市場において自社ブランド展開を堅持する意向。「時代を先取りした商品開発で需要を喚起していきたい」(瀬川社長)と将来的には海外展開にも意欲を示す。


----この3年のDIY塗料市場は、巣ごもり消費の特需と反動を強いられました。和信さんの状況はいかがですか。

「2020年は、ご指摘のように巣ごもり消費で販売量が伸び、2021年、2022年はその反動を受けています。ただコロナ前の2019年と比べると約10%増で推移しており、当社としては自力が高まったと評価しています。品目別で見ると、主力のニスが横ばいで推移し、木材防腐防虫剤の『クレオパワー』やワックス状のDIYペイント『ウッドアトリエ』などの新製品が売上に寄与している構図です」

----和信さんは、ホームセンター(HC)店舗の約8割を押さえているニスが強い印象があります。ニスの今後については、どう見ていますか。

「決してこれから大きく伸びる品目ではないですが、コロナの影響を問わず、安定した需要を維持しています。ただ競争市場の中で手を打たなければ、シェアを奪われます。そこで当社としては、水性ニスの普及に注力してきました。その結果、10年前は油性8、水性2だったのに対し、現在は水性7、油性3に逆転しました。これは良い水性分散樹脂が開発されたことで品質が向上したこと、また店頭で危険物の在庫が敬遠されてきたことが水性シフトに拍車をかけています」

----変化をチャンスに捉えたということですね。来年早々にもフローリング向けの新製品を投入するということですが。

「8月のDIYショーで発表した商品ですね。『フローリングコート』と名付けました」

----特長について教えてください。

「木床に加えて、シート床材にも塗装できるのが特長です。これまでも商品化の要望を頂いていましたが、密着性の確保に苦労していました。来年からの本格発売になりますが、今から反響が楽しみです」

----木床材とシート材両方に適応させた点が興味深いですね。

「これは当社がこだわった部分です。お客様が床を塗りたいと思った際、自宅の床材が木なのか、シート材なのか把握している方は少ないのではないでしょうか。また本物の木に見えるシート材もあり、一般の方には見分けがつかないことを想定して、兼用での開発を重視しました」

----既存品の「水性フローリングニス」はどうなりますか。

「用途が重複しますので、廃番にする予定です。我々は常に売り場(棚)を効率的に活性化させていく役割がありますからね」

----ホームセンターは、塗料においてもPB化を積極的に推し進めていますが、メーカーブランドを堅持する秘訣は何でしょうか。

「お客様の嗜好の変化に対応した商品開発と売り場の提案に尽きるのではないでしょうか。ニスについても当社のアイテムをすべて店頭に置くことはできません。売れ筋の艶消しを増やすために艶ありの色を減らしたり、絶えず棚のブラッシュアップが重要です」

----商品開発も独自性が必要になりますね。

「昨年は、人工木材用に『パワープロテクト』を上市しました。これもホームセンターで人工木材が売れ出している情報をキャッチして開発した商品です。まだ普及し始めたばかりの材ですので、本格的な塗り替えはこれからですが、艶引けや色あせの解決策としてPRしています。お客様にとっても、事前に劣化に対する手立てがあれば、安心して材を買えますからね」

----塗料があることで関連商品に連動する提案になりますね。今後も新商品で活力を高めていく考えですか。

「その通りです。先ほどのシート材や人工木材への対応もそうですが、基材や嗜好の変化を先取りした商品開発を積極化していきます。変化への対応は、メーカーとしても活力を高める術になるからです。あとは海外展開も積極化したいですね」

----海外展開ですか。勝算は。

「コロナ禍で少し動きを止められていますが、まずは中国、韓国での展開を計画しています。日本と同じ木を使う文化を持ちながら、BtoBをメインとしており、当社商品に対して現地商社から強い要望を頂いています。コロナが明けたら本格化していきます」

----最後に社内体制の改革にも注力しているということですが。

「創業以来、親会社から借りていた本社工場の土地・建物を購入しました。まずは倉庫を新設し、その後は工場の立て直しに着手します。いずれも目的は将来に向けた事業基盤の強化です。安全性、作業性、効率性の取り組みが優位性を維持するために不可欠になると見ています。更に資材調達から配送に至る情報の一元化も進めていく計画で、ストック型からフロー型へシフトを図っていきます」

----ありがとうございました。



瀬川義浩氏
瀬川義浩氏
フローリングコート(300ml、0.7L、1.6L)
フローリングコート(300ml、0.7L、1.6L)

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