少量多品種時代の工場改善施策
塗装専業工場の方向性

縮小する国内工業塗装市場で勝ち抜くため、塗装専業者(コーター)は自社の強みを見極め、それを生かした展開を推し進めることが重要になっている。その際、経営トップに求められるのが市場に対する先見性だ。かつての大量生産時代から少量多品種時代へと移り変わる中で、明確に方向性を示す塗装専業者が目立ってきた。


製造業はグローバルで地産地消が進んでおり、人口減なども考慮すると国内の工業塗装需要に関して、「将来的な規模拡大は期待できない」との声が支配的だ。2020年の東京オリンピック開催が迫っているが、その特需を期待する声も少ない。

かつての大量生産・大量消費の時代が終わった今、塗装専業者からは次世代を見据えて新たな活路を見出す動きが見られている。

大別すると、その1つは少量多品種への対応力強化だ。従来、特定顧客の製品に専門性を持たせた塗装ラインを備えていたが、生産量が減少したり単価競争が激化したりして、その顧客が占める割合が減ったためにラインを改造する動き。

溶剤塗装のみの編成から、粉体塗装設備を導入したり化成皮膜処理を取り入れたりして、塗装仕様への多様性を進めて顧客に提案する。更にその中でも大型ワークが可能な設備や、数点レベルの超小ロットの対応を可能とする体制を整えることで差別化を図っている工場もある。

一方、付加価値を持たせた塗装に活路を見出すケースも見られる。例えば、多層工程、磨き・柄付技術が必要になる、カラーバリエーションや意匠性の高いデザイン塗装で勝負する。あるいは特殊素材、特殊塗料を扱うことで塗装に新たな機能を持たせる。

こうしたケースでは手間がかかり専用設備も必要になることが多い。数量や生産性を考えると効率的とは言えないかもしれないが、単純な価格競争からは一線を画している。塗装技術で新たな価値を見出し、収益性を高める方向性だ。

この場合、通常の塗装と併用し取り組んでいることが多く、「体力があるうちに先行投資し、実績やノウハウを積み重ねて需要が膨らんだときには他社が追い付けないくらい先を走っていたい」(塗装専業者)。

また、生産性の向上やコスト削減に改めて注力する動きが目立っている。ハンガーに対する吊りかけの最適化を図ったり、不良品をリコートしたときの損失金額を算出して取り組み意欲を高めたりして工夫を凝らす。更に自社工場の生産状況を顧客(発注元)とネットを介して共有化し連携することで生産性を高めている工場もある。

次世代の見方、
ジルコニウム化成処理に高い関心

最近、関心の高まりを見せているのが前処理に導入されるジルコニウム化成皮膜処理。自動車塗装ラインでの採用が増えているが、中小規模の塗装工場でも採用するケースが目立っている。その際、ポイントになっているのがアルミ材との適性だ。

鉄と比べて軽量化が図れるアルミ材は、今後、自動車分野など多くの分野で広がりが予想されている。

アルミ材の化成処理は、リン酸塩処理とは異なり、ジルコニウム処理では表面調整工程が不要、スラッジ発生が少ないというメリットから採用が増えている。

その一方で薬剤の使用管理幅が狭い、皮膜が着いているのか目視で確認できない、裸防食性に劣っているため放置すると錆が発生しやすいなど扱いが難しいというデメリットもある。ただ導入した塗装専業者では逆にそこをチャンスに捉えている。

「(アッセンブル)メーカーがジルコニウム処理を採用する流れがあり、自ずと我々外注先も指定されてくるはず。次の世代を考えるとジルコニウム系に移るはず。その前に実績を残しておけば、本流が来たときには、他社の技術力に大きな差をつけられる」(塗装専業者)との見方を示す。

国内需要のシュリンクが避けられないことが明白ならば、市場動向を分析し自社がどの方向に向かうべきなのか。そのときに何が強みとなり何が足りないのか。そのために何の手を打つべきなのか。それらを判断し決断する。

厳しい経営環境下にさらされることで成長への道筋を見出すことができる。

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