木材保護塗料市場は約60億円(メーカー出荷額・本紙推計)。平成22年に木材利用促進法が施行され6年が経過したが、塗料需要に対する影響は乏しく、むしろ減少トレンドの中でシェア競争を色濃くしている。

唯一、建築中の新国立競技場に木材を全面的に使ったデザインが採用されたことが明るい話題として関心を集めるが、特需は限定的との見方。ブランドの決定も秘密保持契約の中で極秘裏に進められている。少なくとも木材保護塗料は、構造材として使用を推し進める施策とは乖離した領域にあることを明らかにしている。

ただ建築資材の中で木材が中心だった過去と異なり、今や外装材やエクステリア材に木材を使うということは、デザイン性、環境保全意識、心地良さといった価値の評価がある。つまり、施主にとっては耐久性やコストと異なるところにポジティブ(前向き)な動機があり、木材の意匠価値に沿うことが本質的なニーズであることが分かる。 

木材保護塗料の主戦場は、完全に塗り替え市場にシフトした。築後放置されている木造建築物の塗り替えを喚起することが、需要拡大の道筋との見方があるためだ。

そのため製品展開も耐候性とカラーの再現性を両立した水性半造膜タイプを各社投入し、施主に新たな選択肢を提供した。しかし活膜には直接密着しないなど、依然としてケレン、薬剤洗浄を含めた下地処理工程に課題を残しており、メーカー各社は工法を含めた改修製品の開発に注力している。

しかし、こうした技術的課題の克服が、新築当時に木を使いたいと施主が決断した動機と合致するか、今一度検討する必要がある。見方を変えれば、面倒なメンテナンスも付加価値にする発想が必要となっている。

一部DIYの分野では、容量やパッケージを刷新し、新たなユーザー層の取り込みに成功している。木の持つデザインや風合いもさることながら、加工性や入手のしやすさから幅広いユーザー層を抱える点も木材の特色。各社が注力するカラーバリエーションの拡充は、発想転換の端緒にも映る。

(写真提供・山越塗装)